第10回(3/20) 〜アキラの過去〜
アキラ「昔な・・おっとその前にこの写真見てみ。おいらがおるんやけどわかるか・・・?」
おさむ「・・・・・・・・いないじゃない・・・・・・・・・・・・・。それで話って・・・・・・。」
アキラ「フフフフ・・・。これやこれや。」
おさむ「ええ!ウソ!このひちさん分けにしてる・・・これー!?え〜〜??」
アキラ「いや〜これ中学のときやから、かれこれ・・・7,8年前かな・・。若かったな〜。」
おさむ「今からじゃ想像もできないね。」
アキラ「ま〜そうかもな。このときは友達も一人もおらんかたし、学校なんか全然おもろなかったわ。帰ってもゲームばっかりしてたし、中学卒業して高校入ってもしばらくは何も変化なかったわ。我ながらホンマおもろない青春やなって思いながらいつも学校行って、帰るだけやったな・・・。そんなある寒い日・・・いつもと同じように帰りよったら、前の方で女の子が自転車の横でしゃがんどるんや。チェーン外れたんやろなってすぐわかったけど、関係ないわーって思ってた。でも、よくよく見ると同じクラスの女の子やったんや。しかも、いわゆるマドンナ・・ホラ学年に一人か二人おるやろ、明るくてかわいくて勉強できてみんなの人気者の・・その子やったんやな。」
おさむ「うんうん、それで・・・。」
アキラ「実はおいらも密かに想っとったんやな・・・そんで近づいて行くうちに心臓が破裂しそうになってきて、あれは今まで一番ドキドキした瞬間やったわ。チェーンくらいものの1分もあれば直せるから、声をかけようかかけまいか・・・。そのときまで神様なんて信じたことないけど、本気で祈った・・・勇気をくれって。今考えたらアホやけどな・・。」
おさむ「へ〜アキラもそんなときがあったんだ・・・・・でも全然おかしくないよ・・。」
アキラ「それでな、心臓が破裂しかけやったけど、めちゃ普通を装って”チェーン外れたんか?”って声かけた・・・その瞬間ちゃんと言えたことに、神様に100回くらいありがとうゆうたな〜。案の定チェーン外れとったから、震える手を隠しながら直したんや。まあ、おいらの事なんて知らんやろうし、これだけでめちゃ満足してたから、さっさと帰ろうと思って・・”ほな”って言ったら、彼女”ありがとう!アキラくん”って・・・・。この言葉は今も頭に残っとる・・・。驚いて何も言えんかった・・・。しかも彼女、ジュースおごったるゆって、近くの自動販売機であったかいコーヒー買ってきてくれたんや・・・。どうしてええかわからんかったけど、彼女ホンマ明るくて・・どんどん話してくれて・・・。そんときになに話したか忘れたけど、それからやな〜彼女としゃべるようになったんわ。帰る方向が同じやったから、たまに学校帰り会ったら一緒にしゃべりながチャリこいでたな〜。懐かしいな〜。」
なみ「それでそれで・・・」
アキラ「う、うん??なんでなみがおるんや!い、いつの間に・・・。」
なみ「気にしない気にしない・・・。早く〜。」
アキラ「はぁ〜、まあええわ。ほんで、まさにこの時期やな。生まれて初めてバレンタインデーチョコをもらったんわ。でも、彼女めちゃもててたし、おいらにくれたんは義理チョコやって思ったらちょっと寂しかったな〜。でも、うれしかった・・満足してた・・それだけでホンマ十分やったのに、偶然女の子の会話を聞いてもたんや・・・。彼女本命にしか上げてないって・・・・。そのあと1週間くらい頭が混乱してもうて・・・・・聞き間違いか〜それとも・・・・考えれば考えるほど、混乱して、彼女としばらく目もあわされんかった・・・。でも、こんなんではあかんって思って・・・ついに決心して、学校に行ったんや。ドキドキやったな〜。」
なみ「ああ〜なみもドキドキしてきちゃった・・・・。」(つづく)


 第11回(3/27) 〜アキラの過去2〜
アキラ「ほんでな、今日こそはチョコの真相を聞こうと思って学校に行ったんや。いろいろ考えるうちについに学校に着いてもて・・・教室入るんが怖かった。なんて言えばええかわからんかったから・・・。まあ、でも、悩んでても仕方ないから、思い切って入ったんや。ほならや・・・」
おさむ「ほなら・・・・・」
アキラ「な、なんと・・・・。」
おさむ「なんと・・・・ゴクッ」
アキラ「彼女、まだ来てなかったんや・・・」
おさむ「ホッ・・・って僕がホッとしちゃった・・・・・。ゴッ、ゴホン・・。そ、それで・・。」
アキラ「まあ、正直言ってホッとしたな、その時はな・・・。でも、結局その日は彼女来んかった・・・・。学校帰りも、彼女と会わへんて思うとおもろなかったな・・・。家でご飯も全く食べれんかったし・・大好きなミジンコやったのにやで・・・。ドキドキが明日に延びたんやから当たり前やけどな・・。ほんで、次の日学校に行った・・これまたドキドキやったんや。ところが・・また彼女来てなかったんや。インフルエンザでもかかったんかな〜って思っとったんやけど、次の日も、その次の日も来んかった・・・・。そんで、それから1週間たったある日、朝のホームルームで担任から聞かされたんや・・・彼女亡くなったって・・・・。」
おさむ・なみ「えっ!・・・・・・」
アキラ「彼女元々体弱かったらしいんや・・・。それ聞いた瞬間、ああそうか〜って自分でも不思議に思うくらい冷静やった。ほんで、その日の午後は授業がなくなってみんな葬式に行ったんや・・・。そのときは自分が自分じゃなくなったみたいで・・ちゃんと意識はあるんやで。ただ周りでたんたんと時間が過ぎてるっていう感じで・・。それでいて自分はしっかりしてて、何で涙出えへんのやろって・・。頭はすごい冴えてるんやで。でも、なんか夢の中のようなここちなんや・・。その中で、誰かが近づいてきて、おいらのことをアキラくんって聞いてきて、そうやって言うと、手紙を預かってるゆうて、手渡されたんや。その時は、ああそうって感じでポケットに突っ込んで、そのまま忘れっとったんや。ほんで、全部終わって家に帰りよったら、前の方でチャリの横で女の子がしゃがんどんや。よくよく見ると彼女やったんや。その時ああ全部夢か〜思って・・・これも夢かな〜とかあまり深く考えんと、彼女に近づいて行って、”またチェーンはずれたんか〜”って聞いたんや。ほなら彼女めちゃ笑顔で”うん!アキラくん直して”って・・その時はちょっと手間取ったけど、なんとか直してやったんや。その間彼女はずっと楽しそうにしゃべっとったな〜。ほんで直し終わった後、すごい素直な気持ちで、”おいら、おまえのことが好きや”って言えたんや。ホンマ素直に・・・。ほなら彼女笑顔で”ありがとう。私もだよ・・・”って、その後彼女は”アキラくん、私のママからもらった手紙ちゃんと読んでおいてよ〜、捨てちゃだめだよ〜。アキラくん、ルーズだからな〜”って笑いながら言ってた・・。」
なみ「え?え?わけがわかんない・・・・。どこから夢だったの・・・。彼女は・・・え?」
アキラ「そんで、読む読むって言って、いつもの分かれ道で別れた後、何も覚えてないんや。気づいたら家のコタツで寝てた・・・。ガバッて起きて、右ポケットに手を突っ込んだんや。手紙が入っとった。それ読んだ後涙が止まらんかった・・・・・・。今までの自分の情けなさと彼女の強さ、そして命のはかなさを思い知らされた・・・・・。最後の文章に・・・”私は悔いはないよ、だって思いっきりその瞬間瞬間を楽しんできたから!”って・・・・・・・・・・。」
なみ「・・・・・ヒクッ・・・ヒクッ・・・そんないい子がどうして・・・」
アキラ「古い話や・・・まあ、これを話すんは初てやけどな・・・。ええか、おさむ・・・命なんてホンマはかない。まるで夢のようや・・・。やから、その時を真剣に生きなあかん。失恋で落ち込むんは当たり前や。でも、その後、もうええわ〜ってなったらあかん。もっとええ恋しようおもわなあかん。どうせならええ夢みた方が得やからな〜。なみも、今の彼を大切にしいや〜。」
おさむ「・・グス・・・うん、ありがと・・僕もっと真剣にがんばってみる・・・恋もそれ以外も・・・・・。」
アキラ「あ!!しまった!もうこんな時間や!メル友のユキちゃんに電話せなあかんかったんや!やば!ほな電話してくるわ!うわ〜」
・・ダダダダダ・・・・
なみ「・・・・・・・アキラ、涙ぐんでたね・・・・」
おさむ「・・うん・・・・・」(つづく)
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